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活動紹介

2024年6月15日

2023年度実証検証レポート③「パンAI 検品システム開発事業」


AIによるパンの自動検品。

1日に2万~4万個を製造する豆パンロールを、3Dカメラの画像からAI検品を目指す。
白石食品工業株式会社は、東北地方で親しまれる様々なパンを製造しており、 その中でも豆パンロールは最も製造量が多く1日に2万~4万個を製造しています。
今回の取り組みは、 その豆パンロールの検品作業をAIにより自動化します。
パンは形状が一定ではないため出荷前に形状・焼き色などをチェックする検品作業は、 機械化が難しく人で行う必要がありました。
また大量のパンをチェックする作業は大変神経を使い負荷が高いものでした。
3Dカメラから取得した情報をもとに、AIが豆パンロールの形状、 色彩 外観の検品を実施。
人の作業の置き換えだけでなく、 検品の高度化やデータに基づく品質向上につながる取り組みとなりました。

 

作業負荷が高い検品作業
東北地方のスーパーやコンビニでよく見かけ、 地域住民に親しみが強いパンを製造・販売する白石食品工業株式会社。
中でも豆パンロールは最も多く製造され、 1日に2万~4万個も出荷しているパンになります。
パンは、人の目によって、 1つ1つ検品が行われています。この検品の工程には、 異物混入検査のほか、パンの大きさや焼き色などが規定を満たしているかをチェックする形状等の検査が含まれています。
検査には、 高い集中力が必要になるため、 作業者の負荷が大きく、 また、 体調や精神状態が検査結果に影響するリスクもあります。
食品の検品は工業製品と異なり、 その日の温度や湿度で製品の外観に差が出るものが多く、 作業者による検品結果のばらつきなども課題になっていました。

 

AIによる検品作業項目
今回、最も製造量が多い豆パンロールの検品作業を、 AIによる自動検品化に取り組みます。
自動化する検品項目は①形状、 ②色彩、 ③外観になります。 形状は 「縦横高さが規定通りの大きさになっているか」、 色彩は 「焼き色のチェックを行い、 生焼けになっていないか」。
外観は 「豆パンロールの売りの一つである豆が、 パンの表面に規定の数浮き出ているか」です。
AIにこれらの検品作業を学習させ自動化を図ります。
また、AIに不良品を学習させるのが一般的なところ、 パンは形が一定でないことより、 良品をAIに学習させ、 初めてのパターンの不良品も検出できるようにしました。

 

試行錯誤しながら進めた開発
様々な方法を試しながら今回のAIでの検品化を進めていきました。
形状の検品は、始めは会議室にあるようなWebカメラを使って行ったが、 2次元の映像情報では中々うまくいかず、 LiDARによる3次元の情報を取得できるカメラに変更しました。
また、AIには5万個以上の豆パンロールの画像を学習させ、 その平均的な形に一致する度合いで、 判別させる仕組みにしました。
色彩は、画像を2cm四方にピクセル分割し、その2cm四方の中での色味、 鮮やかさ、 明るさを分析し、適切な焼き色になっているかAIにより評価させました。
外観はパンの表面の豆の数をAIにより測定しますが、側面の豆はパン上部のカメラでは判別が困難です。
そこでベルトコンベアの両側に鏡を設置し、鏡に映った画像をもとにAIが豆の数を判断することで、正しい豆の数を把握することができました。
また、AIによる画像処理は環境光による影響を受けてしまうため、システム起動時に、 環境光による影響を補正し、 いつでもどこでも使えるように改良しました。

 

AI 検品を行ってわかったこと
AIによる検品作業によって、 パンの大きさなどのデータを取得・分析することができました。
分析して初めてわかったことですが、日によって大きさの平均が異なっていました。
これは同じ工程、 同じ温度で焼き上げていても、 その日の気温などによってパンの膨らみ方が変わってくるためです。
人による検品だと、大きめにパンが出来やすい日の場合は、目が大きいパンに慣れてしまい、 基準が大きい方にぶれてしまいます。
その点 AIは正確で、 どんな日でも基準がぶれることはありません。
また、その日のパンの出来をデータでリアルタイムに知ることができます。
そのデータを基に製造工程を微調整することで、規定から外れるパンの数を減らすことができると考えています。

 

事業に対する思い
白石食品工業株式会社 代表取締役社長 白石雄一様
この取り組みを通じて、 白石食品工業株式会社が日々追求する品質と効率の向上に向けた新たな一歩になったと感じています。
今回は豆パンロールのAI検品に取り組みましたが、 単純に人の作業をAIに置き換えるだけでなく、 検品の高度化やデータに基づく生産品質向上につながることもわかりました。
また、今回のノウハウは豆パンロールだけでなく、他製品にも応用が可能です。
AIを有効に活用し、 おいしいパンと共に笑顔が広がる未来を築き、 地域社会とともに成長して参ります。