2024年6月15日
2023年度実証実験レポート①「AI画像処理による市道の穴ぼこ箇所の特定事業」
最先端AIが道路の損傷部分を素早く特定。
穴ぼこマップで道路舗装点検のコストを大幅カット。
寒冷地で多く発生する道路の 「穴ぼこ」は道路管理者等によるパトロールを実施し、できるだけ早期に補修作業を行うようにしていますが、 早期発見や市全体の発生個所を把握することが難しい状況です。
この課題解決に向けて、 盛岡市に長年開発拠点を置き、 デジタル地図事業を手掛けてきたジオテクノロジーズ株式会社が立ち上がりました。
最先端のAI技術を駆使し、 自社のノウハウを結集して、 道路画像から損傷を自動検出するシステムの開発にチャレンジし、 穴ぼこマップによる地図上での道路の損傷個所の確認を可能としました。 今回の事業によって、 未来の道路管理の変革に取り組んでいます。
寒冷地で多発する道路の 「穴ぼこ」
道路の穴ぼこ損傷により、 車両の損傷や自転車歩行者の転倒などのリスクがあり、 自治体にとって悩みの一つでありました。
寒冷地である盛岡市でもまた、冬場の凍結や融解などの急激な温度変化等により道路に穴ぼこ損傷が発生しており、膨大な道路の路線を全て点検することは容易なことではありません。
また、 道路管理者によるパトロールと、 市民からの発見と通報による対応だけでは網羅的に対応するのが難しいのが現状です。
道路の画像をAIで自動処理
穴ぼこを早期に発見して危険個所の補修を図る必要はあるものの、都度対応による発見と通報では限界があります。
そこで、ジオテクノロジーズ株式会社が持つデジタル地図製作のノウハウや、道路標識などの道路上の物体に対する画像認識技術を活かし、AI画像処理による自動検出と位置特定を行います。
AI画像処理で効率的に道路の穴ぼこ損傷を把握することで、最短一か月ほどで盛岡市内の道路全域を正確かつ低コストで網羅的に特定することが可能となります。
また、 将来的には穴ぼこ以外にも、ひび割れ等の損傷についても情報を蓄積し、分析・予測することで、未然防止による効率的な道路の維持管理を目指します。
見た目に特徴が少ないという課題
道路標識など、道路上にある物体のAI画像処理のノウハウを持つジオテクノロジーズ株式会社にとっても、穴ぼこ損傷の画像認識はチャレンジングなテーマであったと北悠人氏は言います。
「穴ぼこ損傷は特徴が少ない。 画像上では色が濃く穴ぼこ損傷のように見えても、 アスファルトの色が異なるだけだったり、影、シミ、 水たまりであることもある。
また、 種類が多種多様で、 ひび割れの様なものから、大きく陥没している様なものまである。 これらを同じものとしてAIに教えるのは難しい。」 と本事業の難しさを語っています。
総距離 1300km・撮影枚数87万枚の膨大な量の実証実験
AI 画像処理の実証実験を行うために今回調査車両が走った総距離は1300kmにも上り、 その有効距離は盛岡市内の道路20%以上、撮影した画像の枚数は87万枚にまでなります。
撮影の方法も検出率が上がるように工夫しました。
また、撮影した穴ぼこ損傷は路盤まで達している甚大な損傷と、表面程度までの損傷に分類。
さらに、撮影した画像の上部は建物や空、下部が道路になることから、AIに学習させる範囲を画像下部に限定し、 精度向上を図りました。
学習させたAにより、 穴ぼこ損傷の位置精度 認識率 (適合率、 再現率) を評価していきます。
高精度な認識モデル構築に成功
穴ぼこ損傷認識の一次評価では、 適合率91% (穴ぼこ損傷と判断したものが実際に穴ぼこ損傷であった割合)、 再現率 94%(対象の穴ぼこ損傷をモレなく認識できた割合) と、高精度に認識することができました。
データ収集などのプロセスを短期間で完遂し、 高精度な認識モデルが構築できたのはジオテクノロジーズの走行調査能力と機械学習技術のノウハウが活かされている、と北氏は言います。
事業に対する思い
ジオテクノロジーズ株式会社 理事 藤澤秀一様
今回の取り組みは当社の強みである、 デジタル地図の知見と道路調査能力、そしてAI画像認識のノウハウ 実績を活かしたものになります。
寒冷地の悩みである散発的な道路の穴ぼこ発生を、AIで自動検知することにより、 道路管理者の労力軽減、 道路舗装点検のコスト縮減を行うことができます。
また、 早期に道路の穴ぼこ損傷を発見することは、地域住民の皆様の安心と安全につながるものと考えております。
当社の技術で、正確かつ確実な路面補修を効果的効率的にサポートします。