MULTI MONO Morioka

活動紹介

2023年4月3日

実証実験レポート⑤「通信及びIoT技術を用いたリモートメンテナンス活用による工場内生産工程の改善事業」

 

IoT技術を活用して工場内の機器を見える化
工場機器の情報をリアルタイムに収集し、故障の予兆検知や早期復旧など生産業務の効率化につなげる

現在、工場の現場では経年劣化や機器故障などのメンテナンスに、県外から機器メーカーのエンジニアが来訪して対応する必要があり、大幅に時間を要することが課題となっています。
本事業ではIoTの利活用によって、機器の状態を離れた場所から確認することを可能とするシステムの実証実験を行います。
工場内の機器を見える化し、機器故障の予兆検知や早期復旧につなげます。

 

 

地方における工場の課題
盛岡市には、多くの工場が存在しています。
工場は機器の故障により生産ラインが止まると大打撃。
そのため工場としては、故障しにくい機器であること、もしくは故障しても迅速に復旧できる機器であることが理想です。
一方、工場機器メーカーとしては、故障発生の報告を受けても大まかな情報しか把握できません。
生産ラインの前後でどのような機器が動いているか確認しなければ、故障原因の特定は困難です。
現状ではエンジニアが現地に赴いて原因特定作業を行う必要があります。
しかし工場機器メーカーは首都圏に多いため、現地に赴いて復旧対応するには時間がかかってしまうという問題があります。

 

工場の現状を分析
工場機器は、PLC(Programmable Logic Controller)と呼ばれる装置で制御しています。
PLCは外部出力が可能となっており、機器の情報を出力することはできます。
しかし、PLCからの情報はオフィスや機器メーカーへの通信経路が無く、情報活用ができていない状態でした。
また、PLCに接続されていない計器類もあり、それらの情報は取得も困難でした。
その場合、情報は往々にして紙への手書きで管理されており、情報活用がされていませんでした。

 

情報活用のシステムを構築
PLCから情報を取得・集約し、可視化や管理を行うユニットを作成しました。
ユニットの基本的な構造は、PLCからの情報を収集する機能とネットワーク接続機能を箱状にまとめたものです。
これまでにユニットは、工場内既存のLANに接続するタイプやLAN回線を利用するものなど3種を試作しました。
また、PLCに接続されていない計器類については、モニタリング用のユニットを別途作成。デジタル情報として取得できるようにしました。

 

ついに実証実験!
様々な苦労も・・・

国内3つの工場で実証実験を実施。PLCとユニットを接続し、工場機器の情報を取得することに成功しました。
PLCに接続されていない計器類についても、複数台の計器類かた1秒以下の間隔でリアルタイムに情報を取得することに成功しました。
実証実験を行ったことで、課題も見えてきました。
株式会社Chaos Edge代表取締役の佐々木正人氏は「一部の機器ではPLCからの外部出力が可能ではあるが、機器の稼働中に外部出力をすることができない場合があり、工場機器の制御機能についてもアップデートしていく必要がある」と述べていました。
導入先での共通の課題となったのが、通信回線の確保です。
工場内に無線LANが十分に整備されていなかったり、電波が届かないところもありました。
LTE回線端末をユニット内部に組み込んだり、場内にオフラインサーバーを設置し、データ集約するなどして対応しました。
またセキュリティ面で安全な通信であっても、外部から工場内のネットワークへのアクセスを禁止したいと言われたこともありました。
工場経営者と会議を重ね、工場内で対応可能な範囲に限定して実証実験を実施したケースもあります。

 

今後の展望
PLC以外で制御されている機器などからも情報収集ができるものを作ろうとすると、どうしてもコストがかかってしまいます。
より多くの工場に導入していくためにも、少しでもコストを抑えられるように、外部企業が制作する計器類や制御機器などのソリューションとも連携できる、ユニットのパッケージ化を構想中です。
また、前述のLTE端末を備えたユニットとソーラーパネルをセットにすることで、周囲にネットワークや電源などのインフラがなくとも利用することができ、導入や維持のコストが抑えられるようになります。
また、取得・集約した膨大な工場機器の情報から、故障発生時の状態を機械学習することで、故障の予測ができるようにすることも考えています。
故障予測により、機器が故障する前に該当の部品を計画交換するなどし、工場ラインの全面ストップを避けることが可能となります。

 

事業に対する思い
株式会社Chaos Edge代表取締役 佐々木正人

我々は「工場」が大好きです。たくさんのものを毎日生産する現場には、たくさんの資材・機械・情報が行き交い、これらをロボットやコンピューター、職能を持った人々が支えています。
我々が大好きな「工場」で働く皆様の仕事が少しでも楽になり、新しいビジネスロジックを考えられる余剰時間や家族と過ごす余暇の時間等を最大化していくお手伝いができれば、これ以上に嬉しいことはありません。
多様なものづくり産業の「こんなことを解決したい」に関わっていきたいと思っています。